シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

バス

 夕暮れ時、バスに乗っていた。整理券を片手でもてあそんで、窓の外を眺めてた。どこかからどこかへ、たどり着くまでの間。幸福だったかもしれない。バスに乗っていたあの瞬間は。
 近頃、僕の頭は思い出してばかりいる。もう考えることはしないのだろうか。ここはどこなのか。どこかとどこかの間なのか。それとももう、すっかりたどり着いてしまったのか。

 バスに乗っていた頃、ときどきお前が前の席に座った。それとも俺が後ろの席に座った。いずれにせよ、そういうときはいつも背中を見ていた。後ろ髪、手をのばせば触れられる。どうしてついに、そうしなかったのか。簡単なこと。楽しんでいたのだ。いつか触れることを予感して、まだ触れないという状態を。それで満足していた。多分、そうだと思う。
 お前は、どうしていつもあそこに座っていた?バスには二人と、寡黙な運転手がいるだけだったのに。

 思い出す。思い出せない。嘘を思い出す。嘘を作り上げる。思い出そうとして、嘘を探している。たどり着いたらどうしよう。どうしようか。僕にはお金がない。だから降りられない。そして支払うべき代金は増していく。だから僕は窓を開けて、整理券を捨ててしまおうか迷っている。それとも僕を捨ててしまうか、ずっと迷っている。
 バスは走り続ける。バスは必ず、いつかどこかへたどり着く。知っていて乗ったのだ。でも、どうしようもない。だから、窓の外を眺め続ける。

 バスがどこかへたどり着いても、僕はどこへもたどり着かない。それとももう、ずっと前に、たどり着いていたのだろうか。
スポンサーサイト

テーマ:落書き - ジャンル:その他

  1. 2008/07/24(木) 02:31:57|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

多弾頭

 –––––心からお悔やみ申し上げます。

 そう言って去ったあの人は、違う場所、別の誰かと笑っている。
 けれど言葉が嘘だったんじゃないと思う。
 きっと、あの人の持つたくさんの心のうち、悲しみの部分だけが切り離されて、私の身体にめり込んだのだ。

 でも、それじゃ私はどうしたら良いのだろう。どこを切り取っても悔やんでいる私の心は。
 考えたあげく、空に打ち上げた。白い煙。SOS。雲と同じ色だから、誰も気付かない。
 破裂。音。閃光。そうして思い知らされるのは、まぶしい太陽と、相対的にちっぽけな私の心。
 聞こえなかったでしょう?見えなかったでしょう?気付けなかったでしょう?
 私はあなたの名前を呼んだのに。世界を満たすあらゆる振動の中に、まぎれた。消えないけれど、あるのだけれど、もう判別のつかない。

 心から、どの心から?切り離して捨てられる、そんな用途の心から。
  1. 2008/06/18(水) 09:48:26|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

メモ乱打

・アマゾンにおける、メジャーな続編ゲームの平均的なレビュー推移。

発売前:嘆き、不安を語る輩の発生。これに対し、そんなことを書くな、というレビュー(?)が発生。場が暖まり始めると、期待してます!的な進行方向不明なメッセージが湧く。

発売後:不満、揚げ足取り、大げさな絶望レビュアーが我先にとプリプリしだす。その後、肯定的な文章がぼちぼち出始める。最終的には、おおむね肯定派が生き残る。

 発売後について考えてみる。なぜそのような現象傾向にあるのか。
 簡単なことだ。前期における否定派の大量発生は、ハマっている多くの人がレビューなんてものを書く暇があったらそれをゲームに費やしているために観察される。後期においては、時期を過ぎてもなおメジャーな続編ものについて語ろうとする者、あるいは検索をかける者は、大体にしてそのシリーズの信奉者だからだ。そこまで大げさでなくとも、少なからずポジティブな感情でそれを見ようとする者だろうから。

 こんな傾向に対し、楽しんだ者勝ちだ、という台詞はよく言われる。けれど少なくとも、アマゾンに不満レビューを書く人の多くに関しては、どうも不満を楽しんでいるように感じるけれど。悦に浸るというか。
 まあ、こんなことは同様の嗜好が自分にあることだからわかる、というか型に押しはめて解釈しているにすぎないんだけど。
 他人のふり見て我がふり直せ、か。でも、楽しいからいいような気もするけどね。
  1. 2008/06/09(月) 01:00:53|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

泣女

 サワ子さんは僕の遠い親戚で、ときどきウチへ泊まりに来ていた。彼女がやって来るのはいつも突然で、そしていつも慌ただしく帰って行ってしまった。幼い頃の僕にとって、彼女は不思議な存在だったけれど、それでもなぜか彼女が来ると、僕はとても嬉しかったのを覚えている。正直に言えばそれは、単純に彼女がきれいな人だったからというのもあっただろう。
 彼女がウチへ来る理由を理解したのは僕が九つになった頃だ。ちょうど祭りの前日に彼女はやって来た。どうやら途中で足を挫いたようで、彼女は棒切れを杖の代わりにしていた。父と母とサワ子さんは土間で静かに話し合って、そうして僕は、サワ子さんと二人で隣村まで行くことになった。「仕方あるめえ」父が何度かそう言った。その度にサワ子さんが、申し訳なさそうな顔をするのだが、僕はそれが嫌だった。
 サワ子さんと二人で歩くのは楽しかった。僕のくだらない話に彼女はいちいち笑ってくれたし、川で水切りをしてみせれば驚いた顔で褒めてくれた。
 隣村へ着いた頃、空はすっかり曇っていた。さっさと用事を済ませて帰ろうと僕が言うと、サワ子さんは困った顔で頷いた。「この辺で遊んでいるといいよ、アタシはもう、大丈夫だから」彼女はそう言ったけれど、僕は着いて行くことにした。そうしたら父と同じに、彼女を見捨てたみたいで嫌だったからだ。
 サワ子さんは村の人に声をかけ、どこかへ案内してもらった。着いた場所は黒と白の幕が掛かった家だった。彼女は家に入る前に僕に振り返り、小声で言った。「ここで待っていて、すぐに済むから」
 きっと見せたくなかったのだろう。僕は彼女の言葉に頷いたけれど、こっそりと見てしまった。人集りの中、誰かの布団の傍らで、声を出して泣きじゃくる彼女の姿を。それはとても悲しそうで、それはとてもきれいだったけれど、僕にはまるで祭りのときに見る人形の劇みたいに感じて、少しだけ、滑稽に見えた。
 「知ってる人だったの?」帰り道に、僕は訊ねた。辺りは暗くなっていたけれど、サワ子さんが首を振っているのは分かった。「じゃ、どうして?」
 「知らんでいいよ。そんなこと」彼女の言葉に僕は黙った。その声が震えていたことに気付いたから。
 「ごめんね。でも、知らずに済むなら、知らなくていいことだから」暗闇の中で、サワ子さんは言った。「その方が、ずっといい」

 サワ子さんは、けれど生涯、泣女としての務めを果たした。僕が大人になってからもずっと。彼女が亡くなったのは一昨年の春だった。僕は葬儀に参列したけれど、もうすっかりそういった別れに慣れきってしまっていて、泣くことはできなかった。しかし、泣女を呼ぶことはしなかった。代わりにその日は大雨が降って、夜更けまで、カエルが鳴くのをやめなかった。僕は彼女の傍らで、いつまでもそれを聞いていた。
 今はもう、昔の話だ。

テーマ:落書き - ジャンル:その他

  1. 2008/05/08(木) 04:00:48|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

刻削

ブリュダナムスよ、黒い兎よ。
あの月を砕いてしまいなさい。
そうすればあの人は盲になって、今夜のうちに朽ちるだろうから。
水袋には穴を開けなさい。
杖には皹を入れなさい。
あの人が何かを見出す度に、それを焼いてしまいなさい。
そしてついに倒れたときには、毛布をかけてやりなさい。
起き上がらぬのが正しいことだと静かに諭してやりなさい。

そうして明日、日が昇ったら、私に悲報を伝えておくれ。
できる限りの大声で。
それから喪服を着させておくれ、私がどんなに抵抗しても。
ブリュダナムスよ、黒い兎よ。
来訪者がみんな去ったら、私に銀のナイフをおくれ。
左の胸の奥深くまで。

テーマ:落書き - ジャンル:その他

  1. 2008/04/30(水) 17:35:49|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

朝靄

 まるで河の一部みたいな街だった。だから、こんな朝は珍しいことではなかった。
 濡れたベンチに腰掛けた。ポケットからタバコを取り出しながら、君の歩いて行った方を見た。戻る気配はない。鳥の鳴き声くらいしか聞こえない。同じ方向に時計がたっていたはずだけれど、残念ながらそれは見えない。心なしか、吸い込んだ煙は湿っぽかった。
 人には距離が必要だ。見えなくなるくらいの距離がいい。この霧を思い切り吸い込んで、僕が見えなくなったら、どんなに良いことだろうか。大きくなりたいんじゃない。できるだけ薄くなりたいんだ。僕は指標が欲しいんだ、誰が僕を見ようとしているのか。遠ざかろうとしているのは誰か。
 スピーカーから擦れたメロディが流れ出す。もう朝だ。やがて太陽が、世界を照らし、影を明瞭にして、意思をからかいだすだろう。ここにあるすべてが、求めずともある。ほら、必要なものは用意したよ。あとは色を塗るだけだよって。

 仕方がないけれど、まだ見たくない。まだ知りたくない。どうか照らさないで。朝靄は、きっと、そこら辺を流れる河に沈んで、もうずっとそのままでいる誰かの慰めなのだろう。ため息と嘲笑と同情。心地の良い憐憫。
――おはよう
 気が付くと目の前にいた君がそう言った。真新しい笑顔で、下ろしたての髪が、心なしか濡れているようだった。
――おはよう
 もう一度言う。答えない僕の代わりをするように。
 けれど僕はうつむいて、首を振った。
――帰ろう
 まだ、靄が晴れないうちに。部屋へ逃げ込もう。影を見られないうちに。

テーマ:落書き - ジャンル:その他

  1. 2008/04/29(火) 22:03:10|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

共鳴

最初、加奈子ちゃんが泣き出した。
次に宏太君が泣き出して、早百合ちゃんもそれに続いた。
その次が誰だったのかわからない。
もうみんな泣き出していた。
部屋の中は泣き声でいっぱいだった。
なぜ、泣いているの?
誰も答えない。
誰も知らない。
誰が泣いているのかも、きっとわからないだろう。

部屋の片隅で、キュウと音がした。
加奈子ちゃんは泣き止んだ。
けれど、宏太君も早百合ちゃんも、そんなことには気付かない。
彼らの泣き声は、部屋全体を揺らしたけれど、扉は閉まっているし、壁は厚すぎる。
いつの間にか泣き声が増えている。
押し殺した泣き声。
口元には罪深い両手。
けれど部屋は閉じられていて、ふたつの泣き声の違いになんて、誰も気付きはしないのだった。

テーマ:落書き - ジャンル:その他

  1. 2008/04/28(月) 22:30:27|
  2. 妄言
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。