シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

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刻削

ブリュダナムスよ、黒い兎よ。
あの月を砕いてしまいなさい。
そうすればあの人は盲になって、今夜のうちに朽ちるだろうから。
水袋には穴を開けなさい。
杖には皹を入れなさい。
あの人が何かを見出す度に、それを焼いてしまいなさい。
そしてついに倒れたときには、毛布をかけてやりなさい。
起き上がらぬのが正しいことだと静かに諭してやりなさい。

そうして明日、日が昇ったら、私に悲報を伝えておくれ。
できる限りの大声で。
それから喪服を着させておくれ、私がどんなに抵抗しても。
ブリュダナムスよ、黒い兎よ。
来訪者がみんな去ったら、私に銀のナイフをおくれ。
左の胸の奥深くまで。
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  1. 2008/04/30(水) 17:35:49|
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朝靄

 まるで河の一部みたいな街だった。だから、こんな朝は珍しいことではなかった。
 濡れたベンチに腰掛けた。ポケットからタバコを取り出しながら、君の歩いて行った方を見た。戻る気配はない。鳥の鳴き声くらいしか聞こえない。同じ方向に時計がたっていたはずだけれど、残念ながらそれは見えない。心なしか、吸い込んだ煙は湿っぽかった。
 人には距離が必要だ。見えなくなるくらいの距離がいい。この霧を思い切り吸い込んで、僕が見えなくなったら、どんなに良いことだろうか。大きくなりたいんじゃない。できるだけ薄くなりたいんだ。僕は指標が欲しいんだ、誰が僕を見ようとしているのか。遠ざかろうとしているのは誰か。
 スピーカーから擦れたメロディが流れ出す。もう朝だ。やがて太陽が、世界を照らし、影を明瞭にして、意思をからかいだすだろう。ここにあるすべてが、求めずともある。ほら、必要なものは用意したよ。あとは色を塗るだけだよって。

 仕方がないけれど、まだ見たくない。まだ知りたくない。どうか照らさないで。朝靄は、きっと、そこら辺を流れる河に沈んで、もうずっとそのままでいる誰かの慰めなのだろう。ため息と嘲笑と同情。心地の良い憐憫。
――おはよう
 気が付くと目の前にいた君がそう言った。真新しい笑顔で、下ろしたての髪が、心なしか濡れているようだった。
――おはよう
 もう一度言う。答えない僕の代わりをするように。
 けれど僕はうつむいて、首を振った。
――帰ろう
 まだ、靄が晴れないうちに。部屋へ逃げ込もう。影を見られないうちに。

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  1. 2008/04/29(火) 22:03:10|
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共鳴

最初、加奈子ちゃんが泣き出した。
次に宏太君が泣き出して、早百合ちゃんもそれに続いた。
その次が誰だったのかわからない。
もうみんな泣き出していた。
部屋の中は泣き声でいっぱいだった。
なぜ、泣いているの?
誰も答えない。
誰も知らない。
誰が泣いているのかも、きっとわからないだろう。

部屋の片隅で、キュウと音がした。
加奈子ちゃんは泣き止んだ。
けれど、宏太君も早百合ちゃんも、そんなことには気付かない。
彼らの泣き声は、部屋全体を揺らしたけれど、扉は閉まっているし、壁は厚すぎる。
いつの間にか泣き声が増えている。
押し殺した泣き声。
口元には罪深い両手。
けれど部屋は閉じられていて、ふたつの泣き声の違いになんて、誰も気付きはしないのだった。

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  1. 2008/04/28(月) 22:30:27|
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パン

固ければ砕け、軟らかければ潰れる。
液体は混ざり、気体は広がる。
留まろうとする意思は摩耗を避けられず
流れ行こうとする意思は真っ先に自らを見失う。

風船にはヘリウムが吹き込まれ
漂うそれを破裂させようとする鳥

破裂して、ヘリウムは拡散していくだけで、
風船は墜落していくだけで、
何一つ失われたものなどない。
ないけれど
子供は泣くのをやめないだろう。
自らの運命を予感して。

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  1. 2008/04/18(金) 21:57:37|
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落下

こんなものか。
そうか、こんなものか。

風圧に眼鏡が吹き飛ぶ。鬱陶しい髪。涙が溢れる。ただの生理現象。そう、そんなもの。

手を振っている。遠い山のもう少し向こう。遥か向こうの夕暮れのあの子。もうずっと昔。
時間は距離に置き換えられない。

口を塞いで左手を思い出す。感触。寂しい感触。
どこかで悲鳴が聞こえるけれど、心臓も、電飾も、ずっと静かだ。
誰だろう、でも、もういいよ。誰も慰めないから、誰も責めないし、誰もいないよ。
だから、もういいよ。ほら、お戻り。暗闇。シャットダウン。

もう少し、もう少しで思い出す。ここは地球で、僕は人間で、身体は物体、重力の偉大さ、不自由さ。
もう不可逆。もう不透明。もう不可蝕。

風圧に感情は吹き飛んで、鬱陶しい神もいない。コツンと軽い音がして、おしまい。
そんなものなんだ。
そして思い出す。魂って固体だったんだって。
この中に入っていたんだって。

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  1. 2008/04/17(木) 02:52:07|
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