シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

夢の手前

 「昔話の中で、人形は人間に憧れるんだ。人間になりたいって、願う。ある話では妬んだりもする。でも、あれって逆じゃないかって、思うんだ」
 「何が、逆なの」
 「命を吹き込まれた人形は、物語の中では人間と変わらない。むしろ経年劣化などを考慮すれば、劣っているのは明らかに人間だよ。でも、それだとプライドかなにかが傷つくから、憧れ、妬まれる対象に自らを当てた。馬鹿らしいよ」
 「そうかな」
 「そうだよ」
 「じゃあ、神様は」
 「ああ、そうだね。うん、じゃあ本当は神様も人間に憧れていたのかもしれない。人間が神様を恨むのは、案外神様に妬まれているからかもね」
 「どうして、神様が人間に憧れるの」
 「さあ、それは聞いてみないとわからないね」
 「ままならないことなの」
 「そう、人間にはままならないこと」
 「ねえ」
 「うん」
 「貴方は、何に憧れるの」
 「うん、昔はね、いろんなものに憧れていた。いろんなものが妬ましかった。だけどね、もう、なににも憧れていないんだ」
 「どうして」
 「どうしてかな。きっと、諦めたんだ。いろいろなものを。多分、一番大きなファクタは、自分を自分だと諦めたこと」
 「後悔してる」
 「なんでそう思うの」
 「そんな顔をしてる」
 「そう。それなら、本当は後悔しているのかもしれない。でも、そうしなければ生きていられなかったのも、確かだよ」
 「どうして、生きようと思ったの」
 「さあ、どうしてかな」
 「考えて、それは大事なこと」
 「誰にとって」
 「生きようとした、貴方にとって」
 「うん。でも、どうかな。生きようとなんて、思ったのかな。生きるとは、行為の継続であって、その継続自体を目的化しなくても生きていける。腹が減ったから食べて、眠くなったから寝る、というだけでもだ。そこに生きようなんて大層な意志はないと思うよ」
 「意志はなかったの」
 「わからない。でも、少なくとも、これまでの行いの向こう側、目的地みたいなものなんて何にも無い」
 「なぜ、生きているの」
 「生きていられるから」
 「貴方は、人間なの」
 「さあ、もう、わからない」
 「どうして」
 「なんだって、同じことだから」
 「貴方は、誰なの」
 「誰だろう。誰だろうね。誰かになりたかった、誰かのなり損ない。きっとそれは、誰も知らない」
 「わかるわけない」
 「わかられたくもない」
 「すべて、微睡みの中に融ける」
 「そして誰もいなくなる」
 「さよなら」
 「うん。さようなら」
スポンサーサイト

テーマ:創作モノ - ジャンル:その他

  1. 2009/07/12(日) 05:07:05|
  2. チラシの裏童話
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<老人と海とアンドロイド 2 | ホーム | 憂鬱なアンドロイド>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://3daysbaldness.blog115.fc2.com/tb.php/110-0c10e17c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。