シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

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暗い・納豆

ここは、とある家庭の冷蔵庫の中。
コンプレッサの唸り声に紛れて、食材達が密やかに会話をしています。
おや、“ごはんですよ”が大きなため息をつきましたよ。
いったいどうしたのでしょうか。
隣にいた“野菜炒め”が心配そうに声をかけます。
「なに、あんた、ため息なんてらしくないね。どうしたのさ」
「どうしたもこうしたもないですよ。わかるでしょう?僕が食い尽くされて、ここから解放されるのはいつなんだろうって、そう思っただけですよ」
「そんなこと」
“野菜炒め”は嘲るように言いました。
「そんなことでいちいちため息をつくのは、ここじゃあんたくらいだよ」
「僕は…、僕はアナタ達とは違うんです。あと白米一杯、たったそれだけで終われるんですよ」
「そのセリフ、三週間前にも聞いたよ。あんた、細菌にやられちまっているんじゃないのかい」
「う、うるさいッ。すっかり傷んだ野菜炒めのアナタに、そんなこと言われる筋合いはないですよッ」
「おやまあ、言ってくれるじゃないか。なら教えてあげるがね、あんた、自分じゃ気づいていないだろうけど、蓋がずいぶんベタついてきてるよ。それじゃあ、人間たちは手に取らないだろうさ」
「黙れッ。ぼ、僕は…、僕の蓋は」
「止めないか、ふた品とも」
彼らの言い争いを止めたのは、納豆でした。
納豆はこのあたりでは一番古くからいるので、みんな納豆の言うことにはよく従いました。
「ごはんですよ、お前の気持ちも分からんではないが、もう少し周りのものの気持ちも考えるべきではないか」
「まったくだね」
「野菜炒めもだ」
ほれ見たことか、と調子に乗った野菜炒めに納豆は厳しい口調で言いました。
「今日のお前は、ごはんですよ以上にらしくない……。妹のことは気の毒だが、それで周囲に当たってはいかん」
「妹?なんのことですか?」
「納豆ッ!」
“ごはんですよ”の疑問を遮るかのように野菜炒めは叫びました。
「こ奴には、別の取り皿によそられた双子の妹がおったのだ。気だての良い子だったが、生まれつき汁の量が多めでな…。今朝方、人間どもに連れて行かれたが、おそらく…」
「あの子は、きっと、人間に食べられたさ。あたしより、ずっと、肉の量だって多かったんだ」
「あるいは、そうかもしれんな…」
「あの…、納豆はなんでそんなことを知っているんですか」
話題を変えたかったのでしょうか。
“ごはんですよ”は納豆に訊ねました。
「ワシぐらいになると、いろいろな場所に移され、いろいろな奴から情報が入るようになるのだよ。望まずともな」
納豆は、自嘲するように言いました。
「さて、そろそろ晩御飯の時間だ」
「ああ、きっと僕、今回こそ食べられるに違いないです」
“ごはんですよ”は祈るように小さく言いました。
けれどそんな“ごはんですよ”に納豆は問い掛けます。
「人間に食べられることは、果たして幸せなことだろうか」
「当たり前じゃないですか。だって僕ら、そのために保存されているんですよ?」
「ああ、そうだろうとも」
納豆は頷きました。
しかし心の中ではこうも考えていました。
『だがそれは、食品としての幸福だ。ずっと食われないワシは、果たして食品と言えるだろうか。そして本当に、ワシの幸せは、食われること以外にあり得ないのだろうか』
「しかし、わからん。ワシにはわからんよ」
「考えるまでもないことだと思いますけど…。僕には、納豆が何故わからないのかが、わからないですよ」
不満げな“ごはんですよ”に、野菜炒めは諭すように言いました。
「いつかあんたにも、わかる時がくるだろうさ。もっとも、あんたはそれを望んじゃいないだろうけど」

やがて、冷蔵庫は開かれ、 いくつかの食材たちは人間の手によって食卓へと運ばれていくのでした。
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  1. 2007/08/18(土) 04:08:21|
  2. 嘘八百並べ立て祭り
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