シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

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《4.気球に乗って》

確かに、最初にバカなことを言い出したのは私自身だ。
でもあのときは頭がアルコールにやられていたし、その場のノリで言ってみただけのいわゆる冗談のつもりだったんだ。
「大丈夫?」
「まあ、最悪の一歩手前」
私は顔を上げて答えた。
彼女は心配そうに私を見つめ続けていた。
「ごめんね」
今にも泣きそうな顔をされても、どうしようもない。
悪いと思っているなら、今すぐこれを降ろしてもらいたいけれど、そんなことが不可能なことくらい理解できる。
何せここは、海の上なのだから。
「いいって、もう」
「でも」
「それより、陸地に近づけているのかが問題でしょ」
私は立ち上がり、周囲を見渡した。
「陸地は、あっちだよ」
彼女はおずおずと私の後ろを指さした。
「ちょっと……、遠ざかってない」
「ごめん……」
「あー、だからいいって。別にアンタのせいじゃない」
私は再び腰を下ろした。
二日酔いのせいか気圧の問題か、あるいはこの悪夢のような間の抜けた危機的状況のおかげか、とても気分が悪かった。
「あ、見て!あそこに、ほら、船が!」
「まあ…、あの船が空を飛べるなら、助けにきてくれるかもね」
彼女は反射的に私を睨んだ。
「じゃあ、この気球に穴でも開けて、何とか下に降りて助けてもらう?」
「そんな、無理だよ。助けてもらう前に、私たち死んじゃうよ」
「状態としては今と変わらないね」
もう、だんだんと何もかもがどうだって良くなっていくのを感じた。
冷めていく。
慌てふためいて、死にたくないと泣き叫びながら死ぬよりは、諦めて静かにしている方がずっと自分には合っている。
そもそも自分は、あまり生きるのに適していなかったんだ。
だからこうして、仕方なく、否応なく、馬鹿馬鹿しく終われることは幸運かもしれない。
「ねえ。あのさ」
彼女の声が、少し落ち着いているように聞こえた。
「なに?」
「もし、どうしようもなく、お腹が空いたら……。私のこと食べてもいいよ」
「はあ?」
「真面目な話だよ。冗談じゃなくて」
それはそうなんだろう。
けれど、じゃあこの何もない空の上で、どうやって調理すればよいと思っているのだろう。
きっとそういうことまでは、頭が回らないのだろう。
つくづくダメ人間だなあ、と思う。
私と同じくらい、ダメなヤツ。
「ねえ」
「なに?」
「空が、とても綺麗だね。雲も眺めてて、なんか楽しい」
彼女は不思議そうに私の顔を見た。
「せっかくの卒業旅行なんだ。目一杯満喫しようじゃないか」
「うん……」
「私らに、ここで出来る事なんて、精々そのくらいだよ」
「うん…」
彼女がようやく諦めたように微笑んだのを見て、私はほんの少しだけ嬉しいと感じた。
そして空は、ただただ青かった。
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  1. 2007/10/10(水) 15:44:31|
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