シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

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《6.せかい の へいわ》

世界を守るため、僕は戦った。
敵をなぎ払い、血を流しながら、たった一人で。
でももうすぐ、すべては終わる。
何もかもが救われ、すべての時は報われる。
そうしたら、君に会いに行こう。
僕は煙草を灰皿に押しつけて、再びコントローラを握りしめた。
「ねえ」
突然の声に僕は振り返った。
「ああ……、なんだキミか。ビックリした」
「何を、してんのかな」
「え?ゲーム。見たらわかるでしょう。あ、ていうか勝手にウチに上がるのはいいけど、ノックぐらいしてよ。マナーでしょ」
「今、ゲーム消されたら怒るよね?」
「そりゃ、当たり前じゃん」
「そう……。私、それくらい怒ってるんだ。知ってた?」
彼女の表情を判断するのは得意だ。
確かに、そう、どうやらそれくらい怒っているように観察された。
「ごめんなさい」
「なんで怒っているか、わかってる?」
そう言われれば、心当たりはない。
けれど彼女を怒らせるときなんて大概は無自覚的にだから、対処に困る。
とは言えこのまま黙っていてもどうにもならない。
いっそ予測できる側に爆発させてしまった方が安全かもしれない。
「多分……、多分だけど、僕がまたなにかヘマやらかしたから」
「残念」
彼女は鬼のように微笑んだ。
「残念賞として、殴ってあげようか?」
「遠慮しておきたいです。できれば」
大きな音がした。
彼女が壁に拳をぶつけたためだ。
痛くないだろうか、なんてすぐさま考える自分に少し笑えた。
「落ち着いて。お願いだから。僕のせいで怒らせてるのはわかってるけど、お願いだから落ち着いて」
彼女は目を閉じて、ため息をついた。
そしてしばらく呼吸を整えているようだった。
彼女のこういう優しいところは素直に尊敬する。
僕にはとても真似できない。
「キミさ、卒業する気あるの?」
「あるよ」
「就職する気は、ある?」
「いずれ、すると思う……。お願いだから、泣かないで」
彼女は顔を歪めていた。
なぜだろう。
僕が馬鹿な真似をしていると、彼女は悲しむ。
もともとが馬鹿で愚かな僕だというのに、それは理不尽だと思う。
とても複雑な、理不尽。
「そう思うなら、お願いだからちゃんとしてよ」
僕は抱きしめるかわりに、彼女に煙草を差し出した。
解決策は二つ。
僕が彼女の望む通りちゃんとするか、あるいはもう二度と会わないか。
どちらを選んでもそれは、僕の内的な死を意味する。
いったいどちらが、規模の大きな死だろうか。
彼女の震える喉を見ながら、僕は考えた。
「ごめん、こんな人間で」
「私もごめん。でも君が好きなんだ。腹が立つほど」
僕は、ゲームの電源を落とした。
あと30分もあれば救われる世界は、一瞬で消滅した。
ため息をつく。
うつむいた彼女のまなざしに、しょうがないかと思う。
これが僕の役目で、これが僕の演じるべき行為なのだ。
「とりあえず、ご飯、食べに行こう。何か食べたいものある?」
「パスタ」
「了解」
表面的でも、一時的でも、僕らに平和は訪れた。
けれど叙情的な音楽は鳴らないし、エンドロールは流れない。
僕たちが生きているのは、そんな世界だ。
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  1. 2007/10/12(金) 23:54:00|
  2. 連想駄文
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