シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

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《10.とある夜》

夜中に散歩するのは楽しい、と彼女が言っていた。
彼女がそう言うのだから、きっとそうなのだろう、なんて純粋に思い込めるほど自分は清らかではない。
それでもわざわざこんな時間に外を出歩いているのは、彼女と話を合わせるための言わばネタ作り。
今日の学園祭のおかげで折角お近づきになれたのだ、ここで努力しない手はないだろう、と自分を励ます。
こういう地道な努力が何事にも発揮できるのなら、多分再来週の中間テストだって泣きを見ることはないんだろうけど、ほら、人間誰しも得手不得手はあるし、何より時間は有限だ。
ある時間内にできることは、決して無限ではない。
ああ、人間って、何とも無情だよなあ、と思いながら僕は歩く。

しばらく歩いて、ふと立ち止まった。
ついいつもの習慣で学校に向かう道を歩いてはいるけど、さて、どこまで歩こう。
今すぐ振り返って元来た道を戻ったって良いけど、これじゃ話のネタにもならない。
そこで、ああ、夜の学校と思いついた。
それなら他愛のない話の一つでもできそうだ。
うん、あわよくば「今度一緒に夜中学校を見に行かない?」なんて誘ったりしちゃったりして。
なんて。
まあそんなのは無理だろうけど、とりあえず目標がないことには仕方ないし、学校まで行って、そしてさっさと帰ろう。
十月とは言え、少し寒いし。
そんなわけで僕は学校に向かって歩き続けた。
毎日見慣れた景色だけれど、人が一人もいない。
僕しかいない。
本当は、僕の知らないうちに、世界は滅亡したんじゃないか、なんて発想が自然に浮かんでくる。
もしかしたら、彼女もこんな感覚を楽しんでいるのかもしれない、なんて思う。
僕はなるべく静かに歩いたけど、それでも足音は、夜を不純にする音だと感じた。

学校が近づいてくると、違和感に気づいた。
周りには何もないというのに、不自然な明るさがそこにあったからだ。
もしかしたら、教師たちが学校祭の打ち上げをしているのかもしれない。
あるいは、ガラの悪い先輩が。
けれど、それにしては静かだった。
僕は良く言えば繊細、悪く言えば臆病だから、いつもだったらそこであっさりと引き返しただろう。
何にせよ、正体不明なものと関わってプラスであるはずがない、ということくらいわかっているし。
しかし僕は歩き続けた。
その上、その明かりの正体を知りたいとまで思っていた。
なぜなら、まあ、言わずもがな、彼女に話すネタがほしいからだ。
明かりは校庭の方に灯っている、とわかった頃にはもうそれの正体には気づいていた。
たぶん何かが燃やされているのだ。
しかし誰が、何を、何故という点がまだわからない。
僕は校門をくぐり、さらに歩き続けた。

そこにいたのは、一人の制服を着た男子だった。
後ろ姿を遠目で確認しつつ、僕は彼に近づいた。
「何をしてるの?」
彼は一瞬ビクリとしながら、僕の方を見た。
眼鏡をつけたほとんど坊主頭の、ひ弱そうな人に見えた。
「誰?」
「二年の石倉。キミは?」
「三年の不破だけど」
先輩ということは、一応敬語にした方がよいだろうかと思ったけれど、何となくこの人にはその必要はないと感じた。
まあ、時間も時間だし、学校の規定外ということで。
「それで、何してるの?」
「あ、後片付けだよ」
そう答えながら彼は火の中に、段ボールで作られた何かだったものを投げた。
「勝手にそんなことして、怒られない?」
「僕は生徒会だし、それにこの装置もみんな自分で作ったものだ。怒りそうな人間なんて、僕くらいしかいない」
「じゃ、明日、みんなの前で怒るんだ。被害者ぶって」
僕が茶化すように言うと、彼は初めて笑って見せた。
あるいは、口元を歪ませたという方が正確だろうか。
「まさか。僕は何一つ文句を言わないさ。そうすれば、誰も何も言えなくなる」
変な奴だと思った。
頭がおかしいのかもしれない。
けれど困ったことに、僕はこういう人間が嫌いではない。
「何でこんなことしてるの?」
「楽しいからさ」
「楽しい?」
「もともと、こんなもの、壊すために作ったんだ。頑張って作った。壊すのが惜しくなるくらい」
「馬鹿らし」
僕は呟いた。
彼は、いっそう楽しそうに段ボールを燃やし続けた。
「人のものを壊すと怒られる。でもこれは僕のだ。だから誰にも何も言われない」
言い訳染みていると感じた。
不純だと感じた。
僕がここにいるせいで、彼の狂気が不純になったのだろうか。
わからないけれど、僕は不純なものは好きじゃない。
僕自身がそうだから。
「ねえ、不破さん」
僕は初めて彼の名を呼んだ。
彼は手を止めて僕の言葉を待っていた。
それが不純なんだよ。
僕は笑っている内心を感じた。
「きっと不破さんは、いつか自殺するんだろうね。そのときはさあ、僕に教えてくれないかな」
約束だよ、と付け加えて僕はその場を後にした。
こんなの、とても彼女に話せるものではないな、と思いながら。

夜はとても静かだ。
一人っきりの真っ暗闇。
何秒だろうが何分だろうが、過去の一切合財をまるでなかったかのように、静かに見えなくしてしまう。
そんな力があるかもしれない。
そんなことを思いながら僕は歩き続ける。
彼女にも、見えなくしたい過去があるんだろうか、なんて考える。
うーん、素晴らしいな。
夜には見たいもの以外、何も見えやしないのだ。
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  1. 2007/10/25(木) 04:13:23|
  2. 連想駄文
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