シッタカブリオーネ

虚言・妄言・支離滅裂

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

『連絡放置』

学校からのお知らせのプリントを、いつも私は、机の引き出しの奥に忘れていたものだった。
教科書やノートの類はすべて机とロッカーの中に放置していたので、下校時に鞄を開ける機会がなかったためだ。そのせいで何度か問題が起きたりもした。家庭訪問や修学旅行の積み立ての連絡をしなかったため、多少悲惨な出来事にも見舞われた。それでも私がきちんとプリントを渡すようにならなかったのは、何らかの信念や計略があったためではなく、単純に学習能力がなかったためだろう。

忘れられたプリントは学期末にまとめて捨てることになる。しかし最も長い二学期に溜まるその量は尋常ではなく、変形変色は当然のこととして、机の金属部分と木製部分に挟まって取れなくなっていたりするのでタチが悪い。その上机の引き出しが飽和状態になったためロッカーもプリントでいっぱい、ということも度々あった。
そんなことになるくらいなら、その前に、あるいはもらった段階で捨ててしまうのが賢いやり方だったのだろう。けれど私は律儀な馬鹿であったため、学期末前に捨てるなど言語道断であると考え、保存しておくことでプリントを制作した先生の顔を立てさえいると思っていたのである。本当に、我ながら馬鹿極まりない。

あれは小6の二学期末だっただろうか。放課後、私はクラスの友人Oに手伝ってもらいながら年末恒例の居残り掃除をしていた。プリントの中には例え期限切れであっても、渡さないとまずいことになる大事な物があるらしい、ということはその頃漸く理解できるようになっていた。私はOと共に選別をしながらプリントを捨てていたのである。
「これ、何だろう」
ロッカーを担当していた彼が茶封筒を片手に近寄ってきた。私はそれを受け取った。封は糊付けしてあって、まだ開けられていない。なにやら大事そうな物に違いないが、私は迷った。
重要なプリントへの対処は二通りある。謝ってでも親に渡すか、捨てて知らない振りをするか。むろん私としてはなるべく後者で対処したい。判断は、伝えない場合、後に先生から連絡が直接行くなどして問題が発覚してしまうか否かによって決定する。つまりプリントの内容によって判断が下されるわけで、糊付けされた封筒などは困ってしまうのだ。
封を開けてしまって良いものだろうか……。
封を開ければ中が読める。けれどそれが渡すべき物だった場合、四つ折りの跡がついたプリントを渡した時点で、“勝手に人の手紙を読んだ”という別の罪により罰せられるのは明らかだ。しかし、だからといってこのままこの茶封筒を渡せば、誤魔化せるはずだった程度の内容で怒られることになるかもしれない。それはそれで悔しい。

結局私は封を開けることにした。怒られずに済む可能性に縋りたかったし、中身を知りたいという好奇心もあった。
なるべく後から再度糊付けできるように慎重に開けようと試みたが、それは失敗に終わった。破れた封筒はもう使えないだろうから、私はそれをゴミ箱に捨てた。そして、プリントに目を通した。
「なんて書いてあった?」
興味深そうに覗くOに私はプリントを手渡した。
「心電図検査の結果?うわ、再検査じゃん!大丈夫?」
そんなもん知るか!と普段なら言ってやっただろうけど、そのときの私は動揺してそれどころではなかった。
当時の私と言えば、健康なことくらいしか取り柄のない万年元気君である。小学校に入って以来風邪さえひいたこともなかったし、冬でも半袖のシャツを着ていたほどだ。それなのに、再検査だなんて……。

正直に言えば、もう死んでしまうに違いないと思った。そういえば某マンガの、頭髪を一瞬で黄色に変える超猿人間でさえ、心臓病に倒れたのだ。私も同様に死ぬに違いない。助けてトランクス!と叫んだところで未来から誰もやってきてはくれない。仙豆と称して金平糖をむさぼり食ったところで、戦闘力は半分しか回復しない。

私はショックを受けたけれど、結局そのプリントを親に見せることはしなかった。家に持ち帰り、そのまま自分の机の奥に封印した。現実を受け入れたくなかったし、自分が病気でもうすぐ死んでしまうということを親に知らせるのは、申し訳ないような恥ずかしいような気がしたからだ。それにどうせ死ぬなら入院などせずに、学校に通っていたいと思った。できることなら卒業式までもって欲しい、なんてことまで本気で考えた。


けれどまあ、これが読まれている時点で、私がまだ生きていることは明らかだ。私は死ななかった。心臓に何の異常があったのかは未だにわからないが、翌年の心電図検査は普通にパスできたので、きっと何でもなかったのだろう。
さて、なぜこんなことを思い出したかというと、本日実家から電話が来たからだ。

「あんた、机の中に心電図検査の結果が入ってたけど、どういうこと?再検査って書いてあるじゃない!」

いや、あの、母上。いくら実家を出ているとは言え、勝手に息子の机をあさるのは、むしろどういうこと?

「あんたが大掃除に帰ってこないのが悪いんじゃない!」

……どうやら、昔話にケリを付けて、現在におけるプライバシーや仕事についてを議論せねばならないようです。それでは、この辺で失礼します。

とっぴんぱらりのぷう


━━━━━━

"第八回雑文祭"参加作品

・縛り
|書き出し: ○○は、机の引出しの奥に忘れていたものだった。
|結び: とっぴんぱらりのぷう。
|条件: 金平糖を文章のどこかに入れる。
スポンサーサイト
  1. 2007/12/26(水) 02:33:44|
  2. 雑文祭参加作品
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<24時間TVだったら“負けないで”歌ってるとこだろ師走 | ホーム | 『不適切な雑文がありますことをお詫び致します』>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://3daysbaldness.blog115.fc2.com/tb.php/70-f5793d4c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。